◎最近感じること
◎最近考えること
最近の高校生を見ていると色々と思うところ、感じることがあります。今年の夏の甲子園で準優勝した仙台育英高校の須江 航監督の記事には、現代の高校生をどう指導していけばよいのかというヒントが隠されていると思っているので、ネット等で探して読むようにしています。この監督はとても言葉を操るのがうまい人だなという印象です。昨年夏の甲子園で優勝した際にも、『高校生は密なので……』等の言葉を残していますが、別の記事を読むと、テレビで受ける印象とはまた違った面を持っている監督なのだと感じます。須江監督は6年前に、仙台育英高校野球部の不祥事の責任を前監督が取って辞任した後に、系列の中学校から移動をして監督になりました。当然残っている生徒は、前監督の指導を受けるために仙台育英に入学をしてきているはずなので、強引にやってもうまくいかないと考えて、徹底的に言葉で話し合ったとありました。生徒の意見をしっかりと聞いて、監督からの一方的な指導にならないように細心の注意を払ったそうです。テレビで見る須江監督はとてもやさしそうで、きつい言葉を言わない印象ですが、『真剣勝負をする時に優しい言葉だけで、自分たちが持っている力を出し切れるかといわれれば、絶対にそうはではない』と別の記事で語っていました。甲子園で優勝した慶応義塾高校の森林貴彦監督も全く同様な言葉を著書で記しています。また『選手たちで、私が優しいと思っている部員は1人もいないと思う』と述べていました。甲子園で毎年決勝に行くチームが、やさしさと楽しさで頂点にたてる確率は極めて低いと思います。元広島県立観音高校サッカー部顧問で、インターハイ優勝をなしとげている畑喜美夫先生が提唱する『ボトムアップ理論』は、選手がすべてを考えて実践していくという指導法です。素晴らしい手法ですが、実際にはその理論を実行することはかなり難しいと感じています。仙台育英高校のチームカラーは、相手へのリスペクトがしっかりと感じられて、正当な方法で自分たちを向上させていくことに力を注ぐような姿勢がとてもよく見えます。会話から監督としての信念、方向性がきちんと生徒に理解されていて、浸透していることが非常によく見えるチームだと感じています。残念ながら秋の宮城県大会はベスト8で敗退してしまい、選抜出場は閉ざされましたが、応援したくなる学校の1つです。
そういった高校生と比較するわけではないのですが、目の前の高校生をみると、携帯ばかり見ていて、物事に関する興味関心が非常に低くなってきていると感じています。ネットの記事に、最近の高校生は15秒から30秒のティックトックを平気で3時間から4時間見ている、内容を吟味するのではなく、単なる時間つぶしのように“流して”みているとありましたが、授業をしていても同じような傾向を強く感じます。どんなに生徒が、興味関心があると思われるものを扱っても、クラスで4~5人は開始5分で爆睡しています。残りの生徒が退屈そうにしているのなら、内容に問題があるのかもしれませんが、多くの生徒は真剣に取り組んでいるのを見ると、いろいろなことに興味関心をもって取り組むことができない高校生が確実に増えているような気がしてしょうがありません。高校生の就職者数が過去最高の数字になったとありましたが、高校生の3年以内の離職率は50%近い数字になっているのが現実です。携帯でユーチューブにどっぷりとはまってしまう高校生を間近にみると、仕事に興味関心を持てない生徒が出てきてもおかしくはないと思っています。やめた後、次の就職先があればよいですが、大半はフリーターのようなアルバイト生活になる場合がほとんどです。以前担任をしていたときに、就職に際して何か良いアドバイスができないかと考えて、本を片っ端から読んだ時期がありましたが、その時に『かわいがられる力』を身に着けようという記事に当たりました。最初から100%仕事を理解できていないのなら、周囲の人にできる限りかわいがってもらえるように努力することが、とても大切であるという言葉にとても納得がいきました。今は何でも『教えてもらっていないのでできません』という風潮がありますが、『教えてもらえるようにする努力が足りない』とは誰も言いません。教える側の問題ばかりがクローズアップされていて、教えられる側の姿勢についてはあまり扱われていないことがとても不思議です。なぜならば社会生活におけるコミュニケーションは双方向・キャッチボールのはずだからです。片方だけが努力してうまくいくものではないはずです。結局は人間関係に行きついてしまうのかもしれませんが、周囲の人とうまくやっていく能力を学生時代に身に着ける必要性がとても大事だと痛感しています。
以前勤めていた高校の校長が、保護者や生徒とトラブルになった時に『人間関係の摩擦があるのは学校が生きている証拠です。死んでいる学校にはトラブルは起きません。摩擦から逃げるのではなく、堂々と対処してください。最後は私が全責任を持ちます』と全職員の前で話したことは今でも忘れられません。ただ、最近の若い先生や生徒たちは、摩擦を回避するような傾向があるのは否定できません。簡単に言えばできるかぎり、お互い関わらないようにして生活しているように見えます。何でもかんでもパソコンを通した作業になると、対面の会話が極端に少なくなります。結局はどうかかわるかが高校生を含めた学生には最重要課題なのに、そこがとてもドライになっているというか、かかわりを避けているような感じがして、とても違和感を感じています。いずみ高校に来るような生徒には、より深いかかわりが重要だと考えているのは私だけではないと思いますし、学校だけなく社会生活を円滑に行っていくためには、人とのかかわりを避けて通ることはできないと思っています。
私の次女は今、幼稚園の先生をしていますが、講演会で次のようなことを講師が話していたといっていました。『銀座のクラブの人気ホステスさんと人気のある幼稚園の先生は全く同じ対応をしている。銀座にくる年配の社長さんも結局は自分の話を聞いてほしいし、自分を見て欲しいという感情が根底にあって、それは4歳の幼稚園児となんらかわるものではない。だから幼稚園で園児に人気のある先生は、銀座のクラブでも高い確率で人気者になれる』のだと。面白い話ですが言いえて妙です。次女は、親の私の目から見ても園児の扱いがとてもうまいと思います。決してやさしいだけではなく、大事なことは泣かせても納得させて、できたらオーバーなくらいほめて抱っこしています。高校の先生も幼稚園の見学をして勉強する必要があるのかもしれません。
来週から県新人大会です。今回は男子のリレーの2種目のみ。寂しいですが、これが現実です。私自身も最近は、意識して生徒と良い意味で絡むようにしています。記録を向上させることだけのドライな関係性ではなく、人生の先輩としてのアドバイスのようなものを多くしていくように心がけています。そして生徒にはできる限り物事をしっかりと考えて、正しい行動のとれる大人になって欲しいと心の底から願っています。県大会の後には記録会が3つ。それで今シーズンは終了です。最後の締めくくりをしっかりと行いたいと思います。
高校生を相手にしていると、日々頭を抱えるようなこと・考えさせられることがたくさん出てきます。正解がある問題ばかりではないので、年齢を重ねても悩みは尽きません。表現は良くないかもしれませんが、生ものを扱う商売は、扱いを間違えると商品としてお客様の前に出すことができなくなります。ただ、失敗したとしても何もしないで指をくわえてみているだけよりもずっと前進することができます。結局はトライ&エラーを繰り返すしかないのだと思いますし、そこの部分から逃げない勇気が求められるのだと思っています。教員の仕事は本当に奥が深いです。