2018年12月の記事一覧
第2学期終業式
木枯らし一番が吹かないまま師走となりましたが、ここ1週間くらいは冬らしい冷たいを朝を迎えるようになりました。冷蔵庫のように寒い体育館でしたが、時間までにはしっかり集合・整列ができたことから、予定より5分前倒して、第2学期終業式を行いました。
また、技能限定競技大会の表彰をおこないました。
❖国家技能検定「とび」3級 優秀賞 3-6斎藤君、3-6仙波君、3-6藤巻君
❖国家技能検定「とび」2級 優秀賞 3-6都築君
❖国家技能検定「造園」3級 優秀賞 2-4和泉さん
❖国家技能検定「フラワー装飾」3級 優秀賞 3-4飯塚さん、3-4植田さん
【終業式・校長講話】
皆さん、おはようございます。
長かった2学期も本日で終了となります。
皆さんは、遠くない将来、社会人になります。一番近いところにいる3年生の中には、あと3か月で社会人デビューする人もいます。1年生の皆さんだって、あと数年経てば社会人として、自分のやりたいこと・仕事を見つけて、人生を送っていくことになります。今はその準備の真っ最中。特に、来年度に就職や進学を控えた2年生の皆さんは、これから来年の夏にかけて、自分自身のポテンシャルを高めるとともに、資格取得や企業研究に取り組み、「コレだ」と思える仕事や学校を探していくことになります。
世の中には、実に様々な仕事がありますが、お客様と直接やり取りをする商売には、お客様との出会いという点で、数多くのドラマがあります。今日紹介するお話はお客様の思いにどう応えるか、心に訴えるビジネスとは何か、ということを考えさせてくれるものです。
「伝説のオルゴール・ショップ」というお話をします。
名古屋市内のとある百貨店に、オルゴール・ショップがありました。店長の山森さんは、かつて生花を販売する会社のサラリーマンでしたが、あるとき美しい音色のオルゴールに出会い、その素晴らしさにすっかり魅了され、ついには転職を決意したという方です。
14年前のある日、70歳くらいの男性が閉店間際に来店しました。男性は「『すみれの花咲く頃』を探しているのですが、こちらにありますか?」と尋ねました。訊けば、名古屋市内のすべてのデパートとオルゴールを扱うショップを周ったそうですが、ついに見つけることができなかったのだとか。疲れ果てて 最後にたどり着いたのが、山森さんのお店でした。
ここには1台だけ在庫がありました。山森さんは「お客様はきっと喜んでくれるに違いない」と思ったのですが、その男性は困ったような顔をして「同じものが48台必要なんです」と言ってきたのです。何故そんなに多くのオルゴールが必要なのでしょう。山森さんはその理由を訊くことにしました。
すると、その男性はこう言いました。 「長年連れ添った妻が先日亡くなりまして。妻は宝塚歌劇団の大ファンで、生前は、夫婦ではもちろんこと、仲のいい友人を誘っては、何度も公演を観に出かけていたのです。来月、今度四十九日の法要があるのですが、一緒に舞台を観に行った皆さんと、妻との思い出を共有したい。そのために、この思い出の曲をオルゴールにして法要のお返しの品にしたいのです。」
ここで、この歌のことをよく知らない人のために、念のために話しておくと、「すみれの花咲く頃」という曲は、もともとは1953年のドイツ映画「再びライラックが咲いたら」の主題曲ですが、日本では宝塚歌劇団の愛唱歌として知られているものです。こんな感じのメロディです。
さて、亡き奥様の大好きだった、宝塚歌劇団の愛唱歌が流れるオルゴールを香典返しにというのはわかりましたが、オルゴール業界の常識からすると、とても無茶な依頼でした。なぜなら、ひとつの曲の在庫が48台も問屋やメーカーに在庫として残っているとは到底思えなかったからです。一方、もしメーカーに新たに発注して制作するとなると、その最小ロットは100台というのが業界の常識でしたから、48台を売っても残りの52台は山森さんのお店の在庫となってしまいます。何より四十九日の法要まであと2週間しかありませんでしたから、今から制作していても間に合わないのは明らかでした。つまり、妻思いの男性の願いは、とても不可能なものだったのです。
それでも山森さんは、「何とかして差し上げたい」と思い、不可能を可能にすべく、すぐさま動き出しました。当時、観光地などにあるオルゴール館が全国に36あったそうですが、その一館ずつに電話をかけ、「すみれの花咲く頃」の在庫を確認しました。すると、10のオルゴール館で、合計48台の在庫を確認することができたのです。しかし、大変なのはこれからでした。オルゴールの音色を奏でる機械の部分を「ムーブメント」と呼びますが、山森さんとしては、そのムーブメントだけを手に入れたいわけです。箱(「響体」と呼びます)も含めた製品をそのまま買い取ったのでは、中にはたいへん高価な「響体」もありますから、途方もない金額になってしまいます。そこで、在庫をもつオルゴール館に事情を説明して協力を依頼しました。それぞれの商品からムーブメントの部分だけを取りはずし、その商品の仕入先である問屋さんに頼んで他の曲のムーブメントと交換してもらいます。そして問屋に返品されたムーブメントを山森さんが後から買い取るという作戦でした。申し出を受けるオルゴール館にとっては、何も得することはありません。ただ手間がかかるだけの作業です。山森さんは、一館一館に事情を説明し、時には直接赴いて、理解を求めました。 その結果、30台分のムーブメントが確保できました。残りはというと、8台についてはムーブメントだけを取り外して買い取りました。もう10台については、響体ごと買い取ってムーブメントだけを取り外したのだそうです。そして、取りそろえた48台のムーブメントは、それぞれが同じ曲調になるように音色の調整を行ってから、お客様が希望した響体に取りつけました。果たして、納期までに見事48台のオルゴールを揃えることに成功したのです。
小売業である百貨店のショップが、同じ小売から商品を回してもらうこと。そして、少なくとも3か月以上かかるであろう納品を、わずか2週間で仕上げたこと。これら二つの点で、通常の商いではあり得ないことを山森さんはやってのけたのです。 ある取材で「それでは赤字になりませんか?」と問われた際、山森さんはこう答えています。「もちろん、私も商人なので、損得勘定はします。しかし、お客様の曲への思い入れを聞いてしまうと、願いをかなえて差し上げたいという気持ちが勝ってしまうのです。」
「働く」ということはどういうことか。物を売るというのは、単なるお金との交換ではないということを学ばされるお話です。いずみ高校は「地球環境のよき理解者としての、グローバルな視点をもった、品格あるスペシャリストを育成する学び舎」です。品格あるスペシャリストとなるため、相手の立場になって、相手の心を労わることのできる、そんな人になってほしい。そのための第一歩が「時を守り、場を清め、礼を尽くす」ことだと言い続けていますが、いずみ高生一人ひとりがしっかり実践することが大切です。
さあ、この平成30年が終わります。皆さんにとってどんな1年だったでしょうか。相手の気持ちを思いやれる、そんな心づかいができましたか。平成最後の年の瀬に、自分自身の心の成長を振り返り、来月からの新しい1年に向けて、気持ちを新たに臨んでほしいと思います。
そうそう、その後の山森さんはどうされているか、お話しするのを忘れていました。この「伝説のオルゴール店」、惜しむらくは、その後、閉店してしまいました。しかし、山森さんは、「お客様の期待に応えること」を直向きに続け、今ではスイスに本社のある世界的なオルゴールメーカーの営業統括本部長になられているそうです。顧客ファーストの気持ちを忘れず、世界中に美しい音色を届けるプロフェッショナル、素晴らしい方だと思います。
私の話は以上です。3学期には元気に再会しましょう。
また、技能限定競技大会の表彰をおこないました。
❖国家技能検定「とび」3級 優秀賞 3-6斎藤君、3-6仙波君、3-6藤巻君
❖国家技能検定「とび」2級 優秀賞 3-6都築君
❖国家技能検定「造園」3級 優秀賞 2-4和泉さん
❖国家技能検定「フラワー装飾」3級 優秀賞 3-4飯塚さん、3-4植田さん
【終業式・校長講話】
皆さん、おはようございます。
長かった2学期も本日で終了となります。
皆さんは、遠くない将来、社会人になります。一番近いところにいる3年生の中には、あと3か月で社会人デビューする人もいます。1年生の皆さんだって、あと数年経てば社会人として、自分のやりたいこと・仕事を見つけて、人生を送っていくことになります。今はその準備の真っ最中。特に、来年度に就職や進学を控えた2年生の皆さんは、これから来年の夏にかけて、自分自身のポテンシャルを高めるとともに、資格取得や企業研究に取り組み、「コレだ」と思える仕事や学校を探していくことになります。
世の中には、実に様々な仕事がありますが、お客様と直接やり取りをする商売には、お客様との出会いという点で、数多くのドラマがあります。今日紹介するお話はお客様の思いにどう応えるか、心に訴えるビジネスとは何か、ということを考えさせてくれるものです。
「伝説のオルゴール・ショップ」というお話をします。
名古屋市内のとある百貨店に、オルゴール・ショップがありました。店長の山森さんは、かつて生花を販売する会社のサラリーマンでしたが、あるとき美しい音色のオルゴールに出会い、その素晴らしさにすっかり魅了され、ついには転職を決意したという方です。
14年前のある日、70歳くらいの男性が閉店間際に来店しました。男性は「『すみれの花咲く頃』を探しているのですが、こちらにありますか?」と尋ねました。訊けば、名古屋市内のすべてのデパートとオルゴールを扱うショップを周ったそうですが、ついに見つけることができなかったのだとか。疲れ果てて 最後にたどり着いたのが、山森さんのお店でした。
ここには1台だけ在庫がありました。山森さんは「お客様はきっと喜んでくれるに違いない」と思ったのですが、その男性は困ったような顔をして「同じものが48台必要なんです」と言ってきたのです。何故そんなに多くのオルゴールが必要なのでしょう。山森さんはその理由を訊くことにしました。
すると、その男性はこう言いました。 「長年連れ添った妻が先日亡くなりまして。妻は宝塚歌劇団の大ファンで、生前は、夫婦ではもちろんこと、仲のいい友人を誘っては、何度も公演を観に出かけていたのです。来月、今度四十九日の法要があるのですが、一緒に舞台を観に行った皆さんと、妻との思い出を共有したい。そのために、この思い出の曲をオルゴールにして法要のお返しの品にしたいのです。」
ここで、この歌のことをよく知らない人のために、念のために話しておくと、「すみれの花咲く頃」という曲は、もともとは1953年のドイツ映画「再びライラックが咲いたら」の主題曲ですが、日本では宝塚歌劇団の愛唱歌として知られているものです。こんな感じのメロディです。
さて、亡き奥様の大好きだった、宝塚歌劇団の愛唱歌が流れるオルゴールを香典返しにというのはわかりましたが、オルゴール業界の常識からすると、とても無茶な依頼でした。なぜなら、ひとつの曲の在庫が48台も問屋やメーカーに在庫として残っているとは到底思えなかったからです。一方、もしメーカーに新たに発注して制作するとなると、その最小ロットは100台というのが業界の常識でしたから、48台を売っても残りの52台は山森さんのお店の在庫となってしまいます。何より四十九日の法要まであと2週間しかありませんでしたから、今から制作していても間に合わないのは明らかでした。つまり、妻思いの男性の願いは、とても不可能なものだったのです。
それでも山森さんは、「何とかして差し上げたい」と思い、不可能を可能にすべく、すぐさま動き出しました。当時、観光地などにあるオルゴール館が全国に36あったそうですが、その一館ずつに電話をかけ、「すみれの花咲く頃」の在庫を確認しました。すると、10のオルゴール館で、合計48台の在庫を確認することができたのです。しかし、大変なのはこれからでした。オルゴールの音色を奏でる機械の部分を「ムーブメント」と呼びますが、山森さんとしては、そのムーブメントだけを手に入れたいわけです。箱(「響体」と呼びます)も含めた製品をそのまま買い取ったのでは、中にはたいへん高価な「響体」もありますから、途方もない金額になってしまいます。そこで、在庫をもつオルゴール館に事情を説明して協力を依頼しました。それぞれの商品からムーブメントの部分だけを取りはずし、その商品の仕入先である問屋さんに頼んで他の曲のムーブメントと交換してもらいます。そして問屋に返品されたムーブメントを山森さんが後から買い取るという作戦でした。申し出を受けるオルゴール館にとっては、何も得することはありません。ただ手間がかかるだけの作業です。山森さんは、一館一館に事情を説明し、時には直接赴いて、理解を求めました。 その結果、30台分のムーブメントが確保できました。残りはというと、8台についてはムーブメントだけを取り外して買い取りました。もう10台については、響体ごと買い取ってムーブメントだけを取り外したのだそうです。そして、取りそろえた48台のムーブメントは、それぞれが同じ曲調になるように音色の調整を行ってから、お客様が希望した響体に取りつけました。果たして、納期までに見事48台のオルゴールを揃えることに成功したのです。
小売業である百貨店のショップが、同じ小売から商品を回してもらうこと。そして、少なくとも3か月以上かかるであろう納品を、わずか2週間で仕上げたこと。これら二つの点で、通常の商いではあり得ないことを山森さんはやってのけたのです。 ある取材で「それでは赤字になりませんか?」と問われた際、山森さんはこう答えています。「もちろん、私も商人なので、損得勘定はします。しかし、お客様の曲への思い入れを聞いてしまうと、願いをかなえて差し上げたいという気持ちが勝ってしまうのです。」
「働く」ということはどういうことか。物を売るというのは、単なるお金との交換ではないということを学ばされるお話です。いずみ高校は「地球環境のよき理解者としての、グローバルな視点をもった、品格あるスペシャリストを育成する学び舎」です。品格あるスペシャリストとなるため、相手の立場になって、相手の心を労わることのできる、そんな人になってほしい。そのための第一歩が「時を守り、場を清め、礼を尽くす」ことだと言い続けていますが、いずみ高生一人ひとりがしっかり実践することが大切です。
さあ、この平成30年が終わります。皆さんにとってどんな1年だったでしょうか。相手の気持ちを思いやれる、そんな心づかいができましたか。平成最後の年の瀬に、自分自身の心の成長を振り返り、来月からの新しい1年に向けて、気持ちを新たに臨んでほしいと思います。
そうそう、その後の山森さんはどうされているか、お話しするのを忘れていました。この「伝説のオルゴール店」、惜しむらくは、その後、閉店してしまいました。しかし、山森さんは、「お客様の期待に応えること」を直向きに続け、今ではスイスに本社のある世界的なオルゴールメーカーの営業統括本部長になられているそうです。顧客ファーストの気持ちを忘れず、世界中に美しい音色を届けるプロフェッショナル、素晴らしい方だと思います。
私の話は以上です。3学期には元気に再会しましょう。
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