校長室から

2020年12月の記事一覧

第2学期終業式

【校長講話・全文】

 皆さん、おはようございます。

 コロナ禍の影響で、8月25日にスタートした、長かった2学期も本日で終了となります。ドイツの詩人フリードリッヒ・シラーは、「時の歩みは三重である。すなわち、未来はためらいつつ近づき、現在は矢のようにはやく飛び去り、過去は永久に静かに立っている」と表現したそうですが、時の流れは不可逆的で、あっという間の刹那に過ぎていくものですね。
 そう考えると、皆さんが、遠くない将来、社会人になるのもほんの少しだけ先の話です。 

 一番近いところにいる3年生の中には、あと3か月で社会人デビューする人もいます。1年生の皆さんだってあと数年経てば高校を卒業し、自分のやりたいことを見つけ、自分の人生を切り拓いていくことになります。就職や進学を控えた2年生の皆さんは、来年の夏にかけて、自分自身のポテンシャルを高めるとともに、資格取得や企業研究に取り組み、「コレだ」と思える仕事や学校を探していくことになります。

 世の中には、実に様々な仕事がありますが、社会で働くということは、「誰のために自分は役に立っているか」ということではないでしょうか。自分がこの世の中で、何かしら貢献しているという実感こそが、「働く歓び」につながり、心が満たされ、つまりは幸せを感じることにつながります。マネジメントの父として知られるP・ドラッカーは、「組織とは、個として、あるいは社会の一員として、貢献の機会と自己実現を得るための手段である。」と述べています。つまり、何かしらの事業に関わるということは、働く歓びと生きる喜びを得ることになると言っているのです。


 働く歓びとは何か、今日は「イソップ物語」からある寓話をご紹介します。 

 中世のとあるヨーロッパの町。旅人がある町を歩いていると、汗をたらたらと流しながら、重たいレンガを運んでは積み、運んでは積みを繰り返している3人のレンガ職人に出会いました。
 旅人は「何をしているのですか?」と尋ねました。
 すると、そのレンガ職人たちはこう答えました。

 一人目は、「そんなこと見ればわかるだろう。親方の命令で『レンガを積んでいる』んだよ。暑くて大変だからもういい加減嫌になってしまうよ。」と不満顔で答えました。

 二人目は、「レンガを積んで『壁を作っている』んだ。この仕事は大変だけど、日当がいいからやっているんだ。すべては家族を養うためさ。」と汗をぬぐいながら答えました。

 三人目は、「レンガを積んで、後世に残る『大聖堂を造っている』んだ。こんな仕事に就けてとても光栄だよ」と満面の笑みで答えました。

  3人のレンガ職人は、それぞれ「レンガを積んでいる」という仕事自体は同じです。仕事の内容や役割が同じであるため、賃金もほとんど変わりません。しかし、「動機」がまったく違っていました。働く意識、目的意識が全く違うのです。

 一人目は、希望・夢・志といった使命感はまったくありませんでした。ただ言われたからやる。言われなければやらない。ただ「レンガ」しか見ていないのです。作業としての仕事、労役としか感じていません。

 二人目は「金を稼ぐため」に否応なしに働いている。目の前にある「壁」しか見えていません。頭の中は「もっとお金になる仕事はないか」という思いしかないのかもしれません。

 三人目は、後世に残る歴史的事業に参加して、町中の人々を笑顔にするためという大志を抱き、明確な目的意識を持って働いています。この先100年後に完成するであろう「大聖堂建設」のため、仕事を「使命」と感じています。

 ここで皆さんに質問です。もしあなたが家を建てるとしたら、三人の職人のうち誰に頼みますか?
 -もちろん三人目の職人に依頼したくなるはず。 

 世の中に貢献しているという実感、誰かのために役立っているというモチベーションこそ、プロフェッショナルが最も大切にしなければならないものです。目の前のレンガを積んでお金を稼ぐという気持ちでは自分自身の満足は得られません。世のため人のためにと大志を抱いて努力することで、例えば大聖堂建築という偉業につながれば、それはそのまま自分自身に反ってくる。

 いずみ高校は「地球環境のよき理解者としての、グローバルな視点をもった、品格あるスペシャリストを育成する学び舎」です。相手の立場になって、相手の心を労わることのできる、そんな人になってほしい。そうした気持ちが、やがて「誰かの役に立つ」という歓びに変わっていき、真のスペシャリスト、プロフェッショナルになっていくのだと思います。「時を守り、場を清め、礼を尽くす」ことを第一歩として、世の中に役立つ人になるよう頑張ってください。 

 ところで、先ほどの三人のレンガ職人たちのその後はどうなったのでしょうか。件(くだん)の旅人が10年後再びその町を訪ねました。

 一人目は10年前と同じように文句をいいながらレンガを積んでいました。二人目はレンガ積みよりお金の良い仕事に探し出し、転職していました。その仕事といのうは、危険を伴う教会の屋根の上での仕事でした。三人目は建築現場の施工管理者として施工を任されるようになり、のちに出来上がった大聖堂には彼の名前が付けられたということです。 

 コロナとともにいろいろなことがあった令和2年が終わります。

 皆さんにとってこの1年はどんな1年だったでしょうか。相手の気持ちを思いやれるような、そんな心づかいができましたか。そして、誰かのために役立つことができたでしょうか。コロナ禍での年の瀬に、自分自身の心の成長を振り返り、新たな1年に向けて、大きな夢や志を抱いてほしいと思います。

 それでは新年1月8日(金曜日)、皆さんと元気に再会できることを、、、
 私の話は以上です。
 

R02.12.24(終業式・配付文書).pdf

 

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