校長室から

2021年1月の記事一覧

第3学期始業式

【始業式・校長講話】

 皆さん、おはようございます。

 新しい令和3年がスタートしました。この冬休みはコロナ禍の影響で「静かな年末年始」となりましたね。私も帰省は見送り、自宅でのんびりと過ごしました。比較的まとまった時間がとれましたので、年末に三木先生が「海外ドラマを観てみよう」とお話しされていましたが、私は昨年話題となったアニメーションとその映画を観てみました。

 今日はその作品のメッセージでもある「思いやりの心とレジリエンス」についてお話しします。 

 私が観た作品とは、もちろん吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さん原作の「鬼滅の刃」です。皆さんもよく知っているとおり、原作の方は昨年5月に4年と3か月間の連載を終えています。一昨年にアニメ化され、地上波UHF局の深夜枠で放映されると、その後の再放送、動画配信サービスなどで人気に火が付き、空前のブームとなりました。
 私はこのブームの背景には「コロナ禍」があったと思っています。それは主人公の竈門炭次郎という少年のもつ「思いやりの心」と「立ち直る力(レジリエンス)」が、コロナ禍に疲れた私たちの心を捉えて離さなかったから。新型コロナウイルスによって、理不尽な状況に苛まれ、得体のしれない閉塞感のようなものに包まれていく中、劇中に登場する鬼という禍に巻き込まれて生き死にを懸けて戦う主人公たちの理不尽極まりない状況とが重ね合って見えてくるような気がしてならないのです。

 炭次郎はもとより、妹の禰豆子、善逸、伊之助といった仲間、他の剣士、柱、そして鬼までも、その生きざまや家族のあり方などが、物語が進むに連れて明らかになっていきます。「鬼退治」が中心の物語であるものの、単なる勧善懲悪にはなっていません。理不尽で身勝手に振る舞い、悪として描かれる鬼たちでさえ、私たちとはかけ離れているのかと問われれば、人間が持ち得る負の側面を持っていることに気づかされます。自己中心的な考え方、怖れ、妬み、憂いなど、人間の持つ醜悪な部分が「鬼」という存在に象徴されているに過ぎません。現実の社会にある禍や人間のもつ負の部分を「鬼」と表現し、諦めず前向きに立ち上がるレジリエンス、許す心、寄り添い労わる心、そして未来を捉える視点が炭次郎たちの行動を通じて描かれているわけです。

 「レジリエンス」という言葉は、皆さんにとっては耳慣れない言葉かもしれませんが、阪神淡路大震災や東日本大震災といった厄災の後に、日本人がもつべき大切な力としてしばしば用いられてきました。大きな試練や困難に直面した時、その状況を受け止め、それを乗り越えようとする前向きな力のことを「レジリエンス」と言います。この力は人間に生まれつき備えられた力ではなく、様々な経験やトレーニングによって培われ、鍛えられていくものです。たくさんチャレンジし、たくさんの失敗を重ねながらも、それを乗り越えることで強くなっていくものです。実はこのレジリエンスという力に最も必要とされるものが「感謝する気持ち」「人を思いやる気持ち」であって、炭治郎はこうした強いレジリエンスの持ち主だと言えます。

 報道のとおり、国がいわゆる新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を発令し、埼玉県知事・県教育委員会が指示しました。前回4月とは異なり、学校を一斉休業することはしないこととなりましたが、これは、これまでの経験、とりわけ疫学的知見の積み上げによるものであり、ウイルスの感染症が弱くなったわけでもなければ、決定的な治療薬や予防法が確立したわけでもありません。緊急事態宣言は、現行の法律でできる最大限のメッセージに過ぎず、大切なのは一人一人の受け止めとそのことによる行動変容です。生徒の皆さんにできることは、まずはマスクを確実に着用することです。そして食事中に会話をしない、寄り道をせずに帰宅することです。

 東京大学などの研究チームの実験では、飛沫を出す側がマスクをすると対面した者が吸い込むウイルス量は大幅に減るというデータが示されました。吸い込む側がマスクをした場合も一定の効果が確認されています。こうしたエビデンスが出てきていてもなお、公共の場でマスクを着用しない人や着用の仕方が不十分な人がいて、そのことを巡って揉めごとも起きています。昨年11月には、東京メトロ半蔵門線の車内で、マスクで鼻を覆っていない男を別の40代男性が注意したところ口論となり、男が催涙スプレーを噴射するという傷害事件がありました。人には他人に指摘されると自分の意思決定が阻害された気がして攻撃的になる心理が作用するとの指摘もあります。マスク着用は「社会を守る、大切な人を守る」ために必要なマナーです。法律で定められているわけではありませんが、マスク着用をしない人には、世の中からかなり強い社会正義圧がかかってくるということを覚悟しなければなりません。昨年クラスの授業を見学したとき、マスクを着用していない人が数人いたクラスがありましたが、その後はどうでしょうか。

 マスクを正しく着用してください。これは校長からのお願いです。先生方から指摘されても攻撃的な反応をすることがないように、これらは皆さんを守るために行っているのですから。

 コロナ禍でストレスが溜まるのはよくわかりますが、炭次郎のような「思いやりの心とレジリエンス」で、頑張ってほしいと思います。レコード大賞を受賞したLiSAさんの「紅蓮華」はこの物語の主題歌ですが、歌詞に「ありがとう 悲しみよ」という部分があります。実はこの部分、テレビシリーズのオープニングでは「何度でも 立ち上がれ」と歌詞が差し替えられています。元々の歌詞は物語の後半で炭次郎が達観する思いを表現したものですが、物語の冒頭部を描いたテレビシリーズにはそぐわないと、LiSAさん自らが書き直して唄っているのだそうです。この「何度でも 立ち上がれ」こそがレジリエンスの強さをストレートに表現していると思います。 

 緊急事態宣言下の学校運営について、本日、保護者宛てに通知を出しました。詳細は通知を見てほしいのですが、感染防止の更なる徹底、登下校時の3密の回避、部活動などの課外活動の中止、各家庭へのお願いの4点を記してあります。
 この通知の趣旨を生徒の皆さんもしっかり受け止め、「思いやりとレジリエンス」をもって、ともに、この難局を乗り切りたいと思います。気持ちを一つにして取り組みましょう。

R03.1.08(始業式・配付用).pdf

R03.1.08「緊急事態宣言下の学校運営について」.pdf

 

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